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オレンジ宇宙制作室(創作文章ブログ)

大きな山

 大きな山の上には夜空が広がっていて、夜空は限りの見えない宇宙に続いている。宇宙からはときどき隕石が落ちてくる。だから、畳には小さな焼け焦げがたくさんできてしまった。大きな山は私の部屋にある。
2019.04.07 08:44(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

雪子たち

 とても白くてかわいらしい女の子だった。
 だから、僕らは雪子と名づけた。
「かわいい」
 そう言って君が抱きしめたら、雪子は溶けてしまった。
 君は泣きそうになって僕を見る。
「大丈夫」
 僕はそう言って君を抱きしめた。
「明日になったらまた生まれるよ」
 僕の腕の中で君も溶けてしまって、僕はもう一度繰り返す。
「大丈夫。明日になったらまた会える」



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2019年3月21日開催の「第8回Text-Revolutions(テキレボ)」内ユーザー企画
第7回300字SSポストカードラリー
お題:雪
http://300.siestaweb.net/

上記企画で作成したポスカの本文です。


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2005年11月発行のオレンジ宇宙工場製品カタログ7「無責任の心得」より。少し修正。
初出は「短冊ロマンティカ」への投稿。
2019.03.30 12:03(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

黒いブーツ

 かつんと鳴る踵から、小さな星が弾け飛ぶ。
 底が剥がれたつま先は、ぺふんぺふんとため息を吐く。
 この踵とつま先が、雨でも雪でも跳ね除けてくれるから。
2019.02.06 23:38(Wed)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

無題

夜、二人、髪の結び目を切る。
2019.01.19 00:22(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

十一月がやってくる

「十一月というのはあれかね、十二月の一つ前のあれかね?」
「おっしゃる通りでございます」
「十二月というのはあれだろう? 一月の一つ前の」
「いいえ、最後のあれでごさいます」
「最後? 最後なのか? 一月の前ではないのか?」
「最後でごさいます」
「なんとっ!」
2018.10.28 23:26(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

十月病

 今年も十月を踏んづけた。辺りに霧が立ち込める。恐る恐る一歩踏み出すと、また十月を踏んづけた。霧がさらに濃くなる。進むたびに十月を踏んでしまい、霧は一向に晴れない。私は仕方なく真っ白な中を歩いている。
2018.10.23 12:54(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

夕暮れのお別れ

「もう終わりにしよう」
 そう言って彼女は、僕に手のひらを差し出す。
 僕はうなずいて、彼女の手のひらに「さよなら」を乗せた。
 それは彼女の手のひらから滑り落ち、アスファルトの上で形を変える。
 往生際悪く「いやだよ」に変わった僕の「さよなら」を見て、彼女は僕に「ごめんね」を差し出した。
 僕はそれを受け取って、しっかりとポケットにしまう。
 ふと見上げた茜空には、ナイフで切り裂いたような三日月が出ていた。


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2004年12月作 発掘品
2018.10.20 15:39(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

柔らかな檻、秋の欺瞞

「ほら、君の好きなかぼちゃ。パイにしてみたんだ」
 どうかな、と彼は微笑む。ベッドの上で体を起こした私にパンプキンパイの載った皿を差し出した。大きな扇型にカットされたパイはこんがりときつね色で、緩くホイップされたクリームが添えられている。断面に覗くフィリングにはナッツが混ざっているのがわかる。パイ皮のさっくりとした歯ごたえまで想像できそうだった。おいしそうで目が離せない。
 そんな私を彼が目を細めて見ているのに気づいて、私は気力を振り絞って顔を背けた。
「いらない」
「マロンパイの方が良かったかな。それとも、スイートポテト?」
 どれも食べたいけれど、そうじゃない。
「甘いものでごまかさないで! 本当のことを教えてよ! 私、本当は秋じゃなくて夏なんでしょう?」
「君は秋だよ」
「嘘! 秋がこんなに暑いわけないわ!」
 彼は私をまっすぐに見た。
「君は秋だ」
 強い言葉に私は何も言えなくなる。すると、彼はふわりと表情を緩め、私の頬を撫でた。
「君も僕と同じで、秋だよ。僕が言うんだから、絶対だ」
「だったら、なんでこんなに暑いの? 私がここにいるせいなんじゃないの?」
「大丈夫。君は何も心配しなくていい」
 それから彼は、フォークで切り分けたパイを私の口に押し込み、残りの皿を私の膝に乗せた。
「夕食はキノコご飯とサンマにしよう」
 それだけ言って部屋を出て行く彼を私は見もしなかった。パンプキンパイは思った通りにとてもおいしい。自分が秋か夏かなんてもうどうでもいい。私は一心不乱にパイを食べ続けた。
2018.10.07 11:42(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

十月五日

 穴の空いた傘を街灯がプラネタリウムに変える。雨粒の軌跡は流星の尾。銀砂を散らしたアスファルト。いつもと違う歩道の、暗がりに潜む私。



製品カタログ22「息の根」収録


2018.10.05 20:11(Fri)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

唇と髪と嘘

 私の髪はおかしい。温度と湿度と気圧への反応が異常だ。
『僕の唇を奪っただろ?』
 彼が筆談で尋ねる。怒ったようなその顔には唇がない。
「まさか」
「あなたのじゃないわ」
 私の顔の二つの唇が順に答える。嘘をついたせいで温度と湿度が上がる。髪が膨らむ。伸びる。気圧が下がる。髪はうねりながら、空に登る。そして雨が降ってきた。
『君に嘘がつけるわけないだろ』
 彼が空を見上げると、私の顔の片方の唇からため息がこぼれた。


三題噺:雨・僕・嘘
ツイッターのハッシュタグ「#雨・僕・嘘で文を作ると性癖がバレる」



豆本「超短編豆本 2019年青ノ巻」収録。

2018.09.18 13:04(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |
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