生
2005.09.02 Friday
深夜に訪ねてきたのは見知らぬ男だった。僕が扉を開けると、男は何も言わずにずかずかと玄関に入り込んだ。
「ちょっと、あなた誰ですか?」とっさに男を両手で押し留め、僕は聞く。
「俺はあんたの親父の友達だ」男の酒臭い息が僕の顔に吹きかかり、気持ちが悪い。
「父は今いませんが、どういったご用件で?」
「いない? って、ここにいるじゃねぇかよ」
いるはずがないということはわかっているのに、僕は内心ぎょっとした。それを抑え、「だから、いませんって」
「んなはずねぇだろ。今、俺はあんたの親父を連れて帰ってきてやったんだから」
「は? 父を?」
酔っ払ってて幻覚でも見てるのか。こうなったら父の友達という話も怪しい。僕はうなずいた。
「わかりましたから、とにかく、帰ってください」
「ほらよ。あんたの親父、確かに送り届けたぜ」
男は僕の手に箱を押し付けて去っていった。両手に乗るくらいの発泡スチロールの箱だ。『生物』と書いたシールが貼ってある。
僕は男を追いかけることも忘れ、慌てて箱の蓋を開く。ドライアイスの煙が流れ出す。丁寧にビニールに包まれているそれに、僕は見覚えがあった。
「きちんと埋めたはずなのに……父さん」
「ちょっと、あなた誰ですか?」とっさに男を両手で押し留め、僕は聞く。
「俺はあんたの親父の友達だ」男の酒臭い息が僕の顔に吹きかかり、気持ちが悪い。
「父は今いませんが、どういったご用件で?」
「いない? って、ここにいるじゃねぇかよ」
いるはずがないということはわかっているのに、僕は内心ぎょっとした。それを抑え、「だから、いませんって」
「んなはずねぇだろ。今、俺はあんたの親父を連れて帰ってきてやったんだから」
「は? 父を?」
酔っ払ってて幻覚でも見てるのか。こうなったら父の友達という話も怪しい。僕はうなずいた。
「わかりましたから、とにかく、帰ってください」
「ほらよ。あんたの親父、確かに送り届けたぜ」
男は僕の手に箱を押し付けて去っていった。両手に乗るくらいの発泡スチロールの箱だ。『生物』と書いたシールが貼ってある。
僕は男を追いかけることも忘れ、慌てて箱の蓋を開く。ドライアイスの煙が流れ出す。丁寧にビニールに包まれているそれに、僕は見覚えがあった。
「きちんと埋めたはずなのに……父さん」
第51回タイトル競作【選評】○
製品カタログ「無責任の心得」収録。
それをたぶん忘れてたから、豆本「超短編豆本 朝顔ノ巻」にも収録。







