隣りの隣り
2005.09.20 Tuesday
耳の中に吹き出物ができた。最初は小さかったから害もないとほっておいたのだが、ある日突然しゃべりだした。
「隣りの隣り」
吹き出物は女の声でそう言った。
驚いて指で触ると「うふふふふ」という笑い声がして、指先が痛んだ。どうやら噛み付かれたらしい。まったく何するんだ、吹き出物のくせに。そう思っている間にも吹き出物は「隣りの隣り、隣りの隣り」と繰り返す。当然ながら、耳の中なのでひどくうるさい。いらいらした俺は、耳掻きでぎゅっと押しつぶした。吹き出物はプチっとつぶれて、黄色い膿が飛び出した。
翌日、目が覚めると吹き出物は元に戻っていた。そいつはまた「隣りの隣り」と言っている。うるさいうるさい、だまれ吹き出物。俺は即座にそいつを押しつぶした。
耳鳴りのように聞こえていた声がやんでから、隣りの隣りって何なんだ、と俺は初めて疑問を抱いた。
「隣りの隣り……隣りの隣り……?」
自分でそう繰り返しながら、玄関のドアを開けると、二つ向こうのドアの前に女が立っていた。
「うふふふふ」
隣りの隣りの女は笑った。
「隣りの隣り」
吹き出物は女の声でそう言った。
驚いて指で触ると「うふふふふ」という笑い声がして、指先が痛んだ。どうやら噛み付かれたらしい。まったく何するんだ、吹き出物のくせに。そう思っている間にも吹き出物は「隣りの隣り、隣りの隣り」と繰り返す。当然ながら、耳の中なのでひどくうるさい。いらいらした俺は、耳掻きでぎゅっと押しつぶした。吹き出物はプチっとつぶれて、黄色い膿が飛び出した。
翌日、目が覚めると吹き出物は元に戻っていた。そいつはまた「隣りの隣り」と言っている。うるさいうるさい、だまれ吹き出物。俺は即座にそいつを押しつぶした。
耳鳴りのように聞こえていた声がやんでから、隣りの隣りって何なんだ、と俺は初めて疑問を抱いた。
「隣りの隣り……隣りの隣り……?」
自分でそう繰り返しながら、玄関のドアを開けると、二つ向こうのドアの前に女が立っていた。
「うふふふふ」
隣りの隣りの女は笑った。
第52回タイトル競作【選評】○△△△×
製品カタログ「無責任の心得」収録。







