オレンジ宇宙制作室

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連れてゆく

「迎えに来たよ」
 お風呂に入っていたら、突然そう言われてあたしはものすごく驚いた。声の出所を探してあたりを見渡すと、シャワーカーテンの隙間から顔をのぞかせているものを見つけた。
 ぱっと見たところ、それはペンギンだった。何ペンギンなのか知らないけど、白と黒だけのシンプルな色合いのつるんとしたペンギンだ。そのペンギンは少年のような高い声で、もう一度言った。
「迎えに来たよ」
「え?」
「さぁ行こう」
 ペンギンはバスタブに身を乗り出して、あたしの腕をひっぱる。ひんやりとしたペンギンの手が思ったよりも気持ちいい。
「ほら、早く早く。急がないと乗り遅れるよ」
「え? 何に?」
 あたしがそう聞くと、ペンギンはシャワーカーテンを全部開ける。ほらと彼の振り返る先を見ると、バスタブの向こうは白い砂浜とコバルトブルーの海で、少し先に船があった。その船はテレビで見たことがある豪華客船みたいに大きい。
「あれに乗るの?」
「そう。だから急がなきゃ」
 ペンギンはぺしぺしとあたしの腕を叩き、髪をくちばしでひっぱって急かす。あたしは慌ててタオルに手を伸ばし、
「ね、酔い止め持ってない? あたし乗り物酔いするんだけど」


第53回タイトル競作【選評】○△
豆本「超短編豆本 朝顔ノ巻」収録。

| 500文字の心臓 | 04:20 | comments(0) | trackbacks(0) | web拍手 by FC2

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