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オレンジ宇宙制作室(創作文章ブログ)

渚のさなぎ

 雨が降っている。波が砂をさらっていくのが、足元が崩れていくようで怖い。
 彼女のワンピースの背のファスナーが少し開いていて、黒と緑の細いケーブルがはみ出している。僕は気付いていたけれど、ずっと見ないふりをしていた。
「ほら、新しいほくろ」
 そう言って、彼女は少しスカートを持ち上げて見せる。白い脛に薄い花びらがへばりついていた。
 不安定に肘で支えた傘が風にあおられて後ろに落ちた。僕はそれを拾って、彼女の肩に乗せて背中を隠してあげた。






一部修正の上、豆本「超短編豆本 2017年春ノ巻」収録。

2016.04.07 17:18(Thu)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |
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