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オレンジ宇宙制作室(創作文章ブログ)

不穏なデート

 手も触れていないのに勝手に開く扉を入ると、首がない人形の列に出迎えられた。不自然な姿勢で固まる彼女たちの間を、私はこわごわ進む。そんな私に構わず、彼はどんどん先に行ってしまう。
「いらっしゃいませー」
 突然声をかけられて、私はびくっと飛び上がってしまった。それをあざ笑うかのように、様々な方向から「いらっしゃいませー」が響き渡る。
 私に声をかけたのは、色の薄い金髪の女だった。やたらと高い靴の踵が不安定に揺れている。
「何かお探しですかぁ?」
 耳をふさぎたくなるような、斜め上に突き抜ける声。
「彼女の服を探してるんだ」
 当たり前に会話をしている彼が信じられない。
「オフショルダーでデコルテを見せたりとか、いかがです?」
 謎の呪文が私を惑わす。彼は私を抱き寄せて逃がしてくれない。
 女は四角い濁った爪で白い布を摘まんで、私の身体にあてる。ひいっと息を飲むと、耳元で彼が笑った。口臭が煙になって私を縛る。
「よくお似合いですよぉ」
 琥珀の目の中で蟻が踊る。真っ赤な口紅が私の鼻先を掠める。彼がうなずくと、「ありがとうございまぁす」の大合唱が轟いた。




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「ホラー超短編」投稿作
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2017/06/post-9945.html

結果
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2017/07/post-4575.html
2017.07.31 22:50(Mon)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |
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