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オレンジ宇宙制作室(創作文章ブログ)

銀のエンゼル

 なんとなく買ったチョコボールを開けて、私は歓声を上げた。
「わー、初めて見る! 銀のエンゼル!」
 祖母に見せると、「ちょっと待ってね。確かこの辺に」と、台所の引き出しを探る。
「ほら、何枚かあるでしょ?」
 祖母が渡してくれたビニール袋には三枚、銀のエンゼルが入っていた。
「すごい! おばあちゃんが集めたの?」
「まさかー」
 ふふっと笑って祖母は袋から出したエンゼルを裏返す。
 そこには、亡くなった父の名前が書いてあった。
2018.07.28 14:55(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十五日

 昔の自分を棚に載せると、ぼた餅が落ちてきた。
2018.07.25 09:21(Wed)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十四日

 スイッチを押すと、全部のカードが裏返る。何度も繰り返すと、段々と時間差ができていく。一番素早いカードは少しずつ浮いてくるから、それをお守りにして眠りにつく。夜が沈まないように。



製品カタログ22「息の根」収録


2018.07.24 21:35(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十三日

 地下に入ると、私の足元に生暖かいものがまとわりつく。くるくると何周かして、駅の冷気にすうっと溶けた。
2018.07.23 23:45(Mon)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十二日

 窓枠がギラリと光り、私を睨む。柿の葉は手のひらを返し、私を日向に押し出す。アスファルトに足を取られないようにオアシスを目指す。
2018.07.22 14:04(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十一日

 電車の中で隣に座る人の手の甲に目があった。やたらと目が合うから、困った。
2018.07.21 21:37(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

記念の時計

 結婚記念の置き時計が動かなくなった。
 天使が二人がかりで掲げているアンティーク調の時計を彼女はとても気に入っていて、「壊さないようにしようね」と言っていた。それが動かなくなったと知ったらがっかりするだろう。彼女が帰ってくる前に直せないかと、僕は時計を天使の手から取り上げた。
 しかし、それは間違いだった。
 裏蓋を開けると、時計の中には針しかなかったのだ。複雑に組み合わさっていた針は一瞬で崩れる。僕は途方に暮れた。正直に話して修理に出そうと思ったのに、彼女は帰ってこなかった。その夜からずっと。そして、一週間後、手紙が届いた。
『壊さないようにしようって言ったのに』







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2018年7月16日開催の「第7回Text-Revolutions(テキレボ)」内ユーザー企画
第6回300字SSポストカードラリー
お題:時計
http://300.siestaweb.net/

上記企画で作成したポスカの本文です。
※写真内の手描き文字も作品の一部で、文字数のカウントに含めています。
2018.07.21 15:30(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十日

 ひび割れた皮膚から血が滲むと、そこから鱗に変わっていく。内から流れ出る血液は私を潤さない。鱗で覆われた人差し指はすっかり蛇になってしまう。ひっそりと目を開く。流れる涙も私を潤さない。ずっと止まない強い雨が甘露だと蛇は気づくだろうか。そうしたらひび割れは治るだろうか。



製品カタログ22「息の根」収録


2018.07.20 09:23(Fri)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

ぺぺぺぺぺ

 星間連絡船の中ではぐれてしまったぺぺが見つかったのは三年後だった。港からの通信でハコダテ星かアオモリ星かと飛び出そうとしたら、コウチ星だという。なぜそんなところに。驚くやら呆れるやら。一番はもちろん安心で、家族みんなで笑い合った。
 コウチ星の港まで迎えに行き、三年ぶりに会ったぺぺはずいぶん大きくなっていた。頭が二つに増えている。尻尾は五本もあった。
「行方不明登録の写真とはかなり違うんですがねぇ」
 どうですか、と首を傾げる職員に、私は何度もうなずいた。
「ぺぺです! ぺぺ!」
 呼びかけると片方の頭が振り向いた。
「ぺぺぺ!」
 もう片方も呼ぶ。どちらもうれしそうだ。五本の尻尾をくるくると旋回させて飛んでくる。
「もうどこかに行ったりしちゃだめよ」
 私は二つの頭をぎゅっと抱きしめた。


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500文字の心臓 第163回タイトル競作『ぺぺぺぺぺ』投稿作
【選評】○
2018.07.11 20:10(Wed)| カテゴリー:500文字の心臓 | 個別表示 |

ちくちく

 通学電車でよく乗り合わせるスーツ姿の男性は、名刺の角でちくちくと刺されている。誰だかわからない手が後ろから伸びて、首筋に名刺を当てているのだ。
 一方、私の首筋には赤いボールペンがちくちくと刺さる。誰が刺しているのかはわからない。振り返ると手はどこかに消え、前を向くとまた現れる。毎日続くうちにそんなものだと諦めてしまっていた。学校に着くといつも首の一箇所が真っ赤になっている。
 今朝はたまたま名刺の角の人が目の前にいた。今日もちくちく刺されているなぁと見ていたら、相手もそう思っていたのか、同情の視線を向けられた。
 ふと彼が私の首筋に手を伸ばしてボールペンを受け止めた。解放感にため息が漏れる。私も背伸びして彼に刺さる名刺を手のひらで受け止めた。彼もほっと息をついた。
 私は名刺を握りつぶし、彼はボールペンを引き抜いた。二人して後ろに放り投げると、なんだかおかしくなって顔を見合わせて笑った。



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「20周年!もうすぐオトナの超短編」
峯岸可弥選 兼題部門(兼題:暴力) 投稿作
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2017/02/20-acd9.html

結果
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2018/07/post-5ad7.html




製品カタログ22「息の根」収録


2018.07.03 23:07(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |
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