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オレンジ宇宙制作室(創作文章ブログ)

七月二十二日

 窓枠がギラリと光り、私を睨む。柿の葉は手のひらを返し、私を日向に押し出す。アスファルトに足を取られないようにオアシスを目指す。
2018.07.22 14:04(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十一日

 電車の中で隣に座る人の手の甲に目があった。やたらと目が合うから、困った。
2018.07.21 21:37(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

記念の時計

 結婚記念の置き時計が動かなくなった。
 天使が二人がかりで掲げているアンティーク調の時計を彼女はとても気に入っていて、「壊さないようにしようね」と言っていた。それが動かなくなったと知ったらがっかりするだろう。彼女が帰ってくる前に直せないかと、僕は時計を天使の手から取り上げた。
 しかし、それは間違いだった。
 裏蓋を開けると、時計の中には針しかなかったのだ。複雑に組み合わさっていた針は一瞬で崩れる。僕は途方に暮れた。正直に話して修理に出そうと思ったのに、彼女は帰ってこなかった。その夜からずっと。そして、一週間後、手紙が届いた。
『壊さないようにしようって言ったのに』







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2018年7月16日開催の「第7回Text-Revolutions(テキレボ)」内ユーザー企画
第6回300字SSポストカードラリー
お題:時計
http://300.siestaweb.net/

上記企画で作成したポスカの本文です。
※写真内の手描き文字も作品の一部で、文字数のカウントに含めています。
2018.07.21 15:30(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

七月二十日

 ひび割れた皮膚から血が滲むと、そこから鱗に変わっていく。内から流れ出る血液は私を潤さない。鱗で覆われた人差し指はすっかり蛇になってしまう。ひっそりと目を開く。流れる涙も私を潤さない。ずっと止まない強い雨が甘露だと蛇は気づくだろうか。そうしたらひび割れは治るだろうか。
2018.07.20 09:23(Fri)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

ぺぺぺぺぺ

 星間連絡船の中ではぐれてしまったぺぺが見つかったのは三年後だった。港からの通信でハコダテ星かアオモリ星かと飛び出そうとしたら、コウチ星だという。なぜそんなところに。驚くやら呆れるやら。一番はもちろん安心で、家族みんなで笑い合った。
 コウチ星の港まで迎えに行き、三年ぶりに会ったぺぺはずいぶん大きくなっていた。頭が二つに増えている。尻尾は五本もあった。
「行方不明登録の写真とはかなり違うんですがねぇ」
 どうですか、と首を傾げる職員に、私は何度もうなずいた。
「ぺぺです! ぺぺ!」
 呼びかけると片方の頭が振り向いた。
「ぺぺぺ!」
 もう片方も呼ぶ。どちらもうれしそうだ。五本の尻尾をくるくると旋回させて飛んでくる。
「もうどこかに行ったりしちゃだめよ」
 私は二つの頭をぎゅっと抱きしめた。


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500文字の心臓 第163回タイトル競作『ぺぺぺぺぺ』投稿作
【選評】○
2018.07.11 20:10(Wed)| カテゴリー:500文字の心臓 | 個別表示 |

ちくちく

 通学電車でよく乗り合わせるスーツ姿の男性は、名刺の角でちくちくと刺されている。誰だかわからない手が後ろから伸びて、首筋に名刺を当てているのだ。
 一方、私の首筋には赤いボールペンがちくちくと刺さる。誰が刺しているのかはわからない。振り返ると手はどこかに消え、前を向くとまた現れる。毎日続くうちにそんなものだと諦めてしまっていた。学校に着くといつも首の一箇所が真っ赤になっている。
 今朝はたまたま名刺の角の人が目の前にいた。今日もちくちく刺されているなぁと見ていたら、相手もそう思っていたのか、同情の視線を向けられた。
 ふと彼が私の首筋に手を伸ばしてボールペンを受け止めた。解放感にため息が漏れる。私も背伸びして彼に刺さる名刺を手のひらで受け止めた。彼もほっと息をついた。
 私は名刺を握りつぶし、彼はボールペンを引き抜いた。二人して後ろに放り投げると、なんだかおかしくなって顔を見合わせて笑った。



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「20周年!もうすぐオトナの超短編」
峯岸可弥選 兼題部門(兼題:暴力) 投稿作
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2017/02/20-acd9.html

結果
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2018/07/post-5ad7.html
2018.07.03 23:07(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

骨を埋める

 母は男に逃げられるたび、「あんたの父親は王子様みたいな人だった」と話した。幼いころは目を輝かせていたが、段々聞き流すようになった。大人になって戸籍抄本を見たら母の名前しかなく、認知もされなかったんだなと少し傷ついた。
 晩年の母は病床で「もう一度あの人に会いたい」と繰り返した。私の父のことだろう。「どこにいるの?」と聞いても「秘密」としか答えなかった母が、その日は違った。
「広場に埋まっている」
「え?」
「私もあの人と同じ広場に埋めてちょうだい」
 それから何日も置かずに母は息を引き取った。私の腕を握った母の力は強く、食い込んだ爪の痕はお葬式が終わるまで消えなかった。
 落ち着いてから母の遺品を整理していて、押し入れの奥に隠すようにしまわれた段ボールを見付けた。中には本が詰まっていた。古墳時代に関する専門書。その時代が舞台の小説や漫画。ガイドブックが何冊もあり、付箋が貼られているのは全部同じ古墳だった。今は広場になっている。
 密かに取り分けておいた母の遺骨を持って、次の日、私は電車に乗った。ガイドブックにある埋葬されていた人の想像図はどことなく私に似ていた。



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「20周年!もうすぐオトナの超短編」
峯岸可弥選 兼題部門(兼題:暴力) 投稿作
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2017/02/20-acd9.html

結果
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2018/07/post-5ad7.html
兼題部門(兼題:暴力)並選
2018.07.03 23:06(Tue)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

サブレ・シトロン

「見ていられるとやりにくいんですけど」
 アイシングを混ぜる様子を観察していると、弟子はちらっとこちらを見た。
「いいから続けろ」
 弟子はボウルを指差す。厨房が暑いのか頬が赤い。レモンの呪文を唱えると、キラキラと星が降って、甘酸っぱい香りが漂う。
 俺は味見して首を傾げた。工程も味も、自分と変わらないように思えるのだが。
「お前がアイシングを作ったときの方が客に好評なんだよなぁ。初恋の味がするんだと」
 そう言うと、弟子は「えっ!」と身を乗り出す。
「俺にはさっぱりわからん」
 首を振ると、弟子は「えー」と肩を落とす。
「なんで一番伝わってほしい人に伝わらないんだろう……」




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「サブレ・シトロンのレシピ」

レモン1個分の香りを煙にして取り出し、くるくると巻き取る。それを丸めて生地を作り、オーブンで焼く。粉糖に卵白を加えて混ぜ、レモンの魔法をかけて、レモンアイシングを作る。十分に冷ましたサブレにアイシングを塗り、満月の光を一晩あてたらできあがり。




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2017年10月28日開催の「第6回Text-Revolutions(テキレボ)」内ユーザー企画
第5回300字SSポストカードラリー
お題:お菓子
http://300.siestaweb.net/

上記企画で作成したポスカの本文です。
※2作掲載


2018.06.30 21:54(Sat)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

無題

さかさまのささかま。さかなのなかま。まさかのささみ。さしみのさみしさ。
2018.06.14 20:29(Thu)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |

昭和遺跡No.655379

 この遺跡からはたくさんの歯が出土しました。全てヒトの乳歯、しかも上の歯でした。長年の謎でしたが、近年、他の遺跡から出土した書物により、上の乳歯が抜けた際に「縁の下」に投げる風習があったことがわかりました。そのことから、この遺跡は「縁の下」であろうと推測されています。また同じ書物の中で、下の乳歯を「屋根の上」に投げる風習も紹介されており、「屋根の上」遺跡の発見が期待されています。
2018.06.03 14:23(Sun)| カテゴリー:単品 | 個別表示 |
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